創作

【オリジナル小説】『数は世界(バベル)を支配する』1-4【数学×能力バトル】

第1章-4 マーセナリー・ハント

「独立傭兵狩り(マーセナリー・ハント)?」
思わず、情報屋の言葉を復唱した。加工音声のみ、所在を隠している情報屋は、「まだ確定ではないが、」と前置きした上で続ける。
「北京の軍は軍備の増強が著しい。最近になって統一が起きた場所で、全国を制覇する算段なのだろう。それに呼応する形で、優秀な数式戦力をヘッドハント……ないし、ヘッドショットしているようだ。
Bang(バン)、とね」
協力しなければ、殺す。そういうことらしい。
「特にトモカズ。お前は、地元寄りの独立傭兵だからな。
北京軍には相当、被害を与えている自覚くらいはあるはずだ」
トモカズは今までに殺してきた手合いを思い返し、返答をしていく。
「……まあ、装備を素直に信じれば、確かに北京軍が正式に運用している最新型の銃が多いな。
『弾(バレット)』も幾つか回収したが、ベクトル計算式は北京側で盛んに計算されている方向性のものだったから、よほど手が込んでいない限りはクロだ」
「ふむ……そこまで調べたのか。私から寄越せる情報はこれ以上ないかもしれんな」
情報屋は感嘆するように応じてくる。若干、語尾に曖昧さを含ませながら。
「知っていることを全部だ。そこまで金は惜しくはない」
「不確定情報を流して現場を混乱させる主義や趣味はないが、な……」
しばらく待つと、情報屋の加工音声がまた再度、放たれる。
「幾つかの、新規にできたPMCが怪しい。
社員が北京から移動した形跡があってな……私も深く突っ込みたくはない。
一覧と、細かいデータを送れるが?」
「値段をどうぞ」
「ふふ……話が早くて、助かるよ」
トモカズは、それなり以上の大金を値引きもせずに支払い、今後の情報提供に便宜(べんぎ)を図ってもらおうとはした。生き残れれば、この情報屋へのツテは有用だ。

なかなか高額な賞金が掛けられている。トモカズはため息と共に確認を終えた。
トモカズ自身への懸賞金である、『生死問わず(DEAD or ALIVE)』。
仰々しく、長ったらしい講釈のような文面と一緒くたになり、要するに北京にとてつもなく嫌われて賞金首になったわけだ。新品の高級車が軽く数台は買えるような金額である。わざわざ北京が東京の独立傭兵一人に対して、直々に掛けた賞金なのだ、安いはずもなかった。
買い被りすぎだろう、とトモカズは思った。が、実際に北京には散々迷惑を掛けているので、これはしょうがないのかもしれない。
彼自身を筆頭に、複数の独立傭兵が賞金首になっている。トモカズは問答無用で掛けられた体だが、ヘッドハントのオファーを断った者もいるのかもしれなかった。
トモカズは考え、賞金首となった東京寄りの独立傭兵に話を持ちかけた。切れ者が多い独立傭兵たちは、自身に賞金を掛けられていることまでは知らない場合はあったが、すぐに話を飲み込んでくれた。
追っ手が来るのなら、それを返り討ちにすることでひと稼ぎをしないか? と。
東京の役所や政府とは最高賞金額を掛けられたトモカズを代表とし、連名で交渉することとなった。
善は急げ、だ。
しばらくは『あざらし亭』にも行けないな、というのは少し憂鬱なトモカズだった。
ハンターをハントする、カウンター作戦だ。
いつ襲撃があっても良いように人混みは避け、市民からは距離を置いて歩く。
安い仕事を幾つか、探せば足を辿れる形で引き受けて、意図的に居場所をバラすこともやった。
『仕事』中に北京側組織からの襲撃を受ければ、すぐさま他の独立傭兵と共同・反撃作戦となる手はずになる。
そして、弾薬輸送の仕事中、『狙い通り』襲撃は発生した。
トモカズが普通車で移動中、砲撃を受けたのだ。車両は大破し、トモカズはひとまず生存、脱出した。
輸送業務は明らかに失敗(Failed)だが、敵をおびき寄せることには成功したわけだ。
だが、
――どこからの攻撃だ?

射撃音の抑制は範囲数式で徹底して行われ、ほぼ無音だった。
東京の高層ビルの上には、二〇ミリ口径の対物ライフルを構えたスーリが居た。
対物ライフル――すなわち、対物理法則狙撃銃である。
その全長は、スーリ自身よりも長い。
「交戦開始。
早くイって散れ、役立たずども♪」
そうして、スーリはウィンクをする。いや、狙撃用のスコープを片目で覗き込んだのだった。
動き出した殺し屋たちが、白昼堂々に展開される、暗殺劇だった。

あとがき

記事ごとのサブタイトルを付けてみました。

そろそろ戦闘・アクション回になります。

なんか、色々と違う対物ライフルが出てきましたが、気にしないでください。

作者も気にしていません(おい、待て)。

チマチマとですが、続きを書いていきます^^

ありがとうございました!!

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