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【New Eden Headline】2・『事件の始まりとは?』

「時はYC124年、4月上旬… ミスター、もしかしたら貴方も見ていたのでは? ここジタ4-4から、無数のカプセルが突如として出港していく様子を。」

まぁ、当然私は後から知ったんだが。
そりゃそうだ、普段はアマーにいるんだ…
まぁ、ここを拠点としているこの男ならば、実際はどうだか。

「えぇまぁ… そうですな。 あの日は朝から少々用事があり外に出ておりましたが… いやはや、中々に印象的、そして驚愕… とでも言いましょうか。 そういう光景でしたな。」

やはりな。

「あれは… えぇ、実際のところはそのどれもが無許可での出港であり、その目的は最初こそ不明でしたが、すぐに発覚しました。 当時のカルダリ海軍研究開発部門の責任者にして、ガリスタスの工作員のリーダーであった…エスリ・ハクゾスの逃亡の支援。 それが、あの事件でした。 後にカルダリ当局は、ガリスタスによる奪取、破壊工作、逃亡からなる複合的作戦の一部であった、そうとも説明していますわ。」
「ふむ… 確か、ドレッドノートの開発プロジェクトを率いていた、という?」
「そうです。 彼女は、フェニックス級ドレッドノートの改良、あるいは省コスト化のための研究に従事しており、そして、あの事件でそれらを盗み出した。 そう言われていますの。」

目前の商人が何かを思い出すように目を細める。

「…あぁ。 そういうことですな。 去年を通してカルダリだけでなく、各国が公開したドレッドノートの新たな高効率な建造手法や、海軍仕様は… それら盗み出された技術に由来する、と。」
「確信はありませんが、恐らくはそうでしょう。 あの事件では、ガリスタスハント、そう称してカプセラ向けにも逃亡したカプセルの破壊任務が発出されていました。 カルダリも、ガリスタスも、これらのデータを高く買い取っていましたし… それは各国や、他の海賊組織でも同じこと。」
「それほど魅力的であった、と。」
「そうなのでしょうね、ミスター。」

ガリスタス海賊団。
始まりは2人のカルダリ海軍からの脱走兵だと言われている。
他の海賊組織と比べると、富への欲望を重視する、しばしば『伝統的』だと言われる海賊団だ。
…カルダリの資産を害することにおいては、これ以上ないほどの悪逆非道の集団だと言っていいだろう。

「さて、話は翌5月へと移りますわ、ミスター。 ガリスタスハントと称された作戦から1ヵ月ほど、次はCONCORDが動きました。 ニューエデン全域の密輸業者や傭兵の拠点に関する情報を公開したことは覚えていますでしょうか?」
「…そんな話もありましたな。 確か、CONCORDが密輸業者の拠点の重力、それと電磁シグネチャを指向性スキャナーでも捉えられるほどの詳細な精度で情報を公開したのだったでしたかな。」
「そうです。 まぁ、プローブスキャンなどが必要となる拠点もあったようですが。 CONCORDはカプセラへもこれら作戦への協力を要請し、作戦遂行中、つまり、密輸ネットワークの解体作戦の最中にカプセラ各自が回収した物品などは星間法秩序への貢献への報酬、つまりは合法的なサルベージ品として取り扱うとまで宣言していました。」
「あぁ、あの手のものは確かに当時、マーケットでもそれなりに取引されておりましたな…」
「やはり、そうですのね。」

そういうところに真っ先に目が行くのはやはり商人だな。
まぁ、CONCORDが報酬だと言い張った以上、カプセラがどう取り扱おうと自由というのは今更言うまでもないことだ。

「まぁ、これは話の本題ではなく… 重要なのはその裏で起きていたこと。 そう、カルダリとガレンテの外交危機ですわ。 それも、非常に深刻なレベルでの…」
「外交危機、というと?」
「先ほどお話したガリスタスによるスパイ事件。 あの数日前、ジタ4-4のPulseバーで、エスリ・ハクゾスととある人物が奇妙な会合を行っていたのです。 この、とある人物が問題でした。」
「とある人物… それとガレンテがどう関係しているのですかな。」
「関係どころの騒ぎではありませんの。 …その人物、男の名はレオボルド・アン・ヴァラーリ。 …ジタ4-4、連邦領事館の外交官ですわ。」
「…! ガレンテの、外交官だと?」
「そうです。 彼は事件の2か月ほど前から、カルダリを訪れていたガレンテ上院議員団を補佐していたことが分かっています。 この議員団の目的そのものはインタキシステムを巡る両国の問題の平和的解決を探るためのものでした。 ガレンテ、インタキシステムには、貴方もご存じでしょうが、インタキプライム、つまりはガレンテ連邦を構成する一種族、インタキ人の母星があります。 ですが、かの地は両国の長年の紛争宙域でもあるプラシッドリージョン。 インタキシステムはここ10年ですら何十回と支配者が変わっています。 長期間カルダリが占領したこともあれば、惑星への直接攻撃すらありました。 …まぁ、それは今は重要なことではありません。 結局、この議員団はスパイ組織の摘発が終わった頃、ガレンテへと帰還しました。 …そう、当時はまだ容疑のかかっていなかった、アン・ヴァラーリを連れて。」

….当局ももっと早く気づいていたら良かったんだが。

「つまり、まんまと逃げおおせられてしまった、と。」
「まぁ… そういうことになりますわ。 この青天の霹靂とも言わんばかりの、唐突な外交危機に、両国の外交官はおろか、CEPのサラキ議長、それとアガード大統領が直接連絡を取ってまで対処していたと言われています。 ですが、結局のところガレンテはこれらの事件には関与していないと主張。 当然、インタキを巡る交渉も頓挫しましたわ。」
「でしょうな。 外交官がスパイ事件に関与していたとなれば、国家同士の信頼関係など一瞬で破綻するもの。 …まぁ、アマーと我々ミンマターよりかは…」
「…それはまた今度にしましょう。 それに加え、カルダリ当局はアン・ヴァラーリを最重要指名手配リストに追加、これにガレンテが抗議したものの、黙殺されるに留まりました。 同時期に、アン・ヴァラーリが帰国後行方不明だという噂も。」
「ハクゾスに留まらず、アン・ヴァラーリまでもが行方をくらませた… ということですな。」
「そうですわね。」

まぁ… ガリスタスがガレンテから支援を受けている、なんていう噂はもうずっと言われていることだったんだがな。
これらの事件でそれが可視化された、そんな気がしてはいるんだ。

「さて、そんなこともあり、ここしばらく改善しつつあった両国の外交関係は一気に冷え込み… 未だ人々の記憶に残る象徴的な、サラキ議長への演説へと繋がるのです。 ジタ4-4であの日開催されていた密輸、海賊被害に対する対策国際会議に合わせ、星間外交促進を訴える内容が予定されていたそうなのですが、カルダリの各企業や市民達が外交官のスパイ疑惑という前代未聞の事件に激しい怒りを露わにした結果… その内容は非常に愛国的なものへと傾き、ガレンテとのかつての敵対関係を思い起こさせるものとなったのです。」
「あぁ、それなら私も見ましたぞ。 ええと…確か…」
「『我々はカルダリであり続ける。 どんな犠牲を払おうとも。』ですか?」
「それですな。 確かに何とも印象的でしたな。 あぁ、それと… その会議の場で、プレゼンをジャックしたニューエデン暗黒街の大物、なんてものをおりましたな。」
「デスレス、ですわね。 あの会議の中継… そう、1日目が始まって3時間ほどでしたわね。 私も作業の傍ら時々見ていましたが、確かに中々に驚かされましたわ。」
「密輸被害対策会議の場で、密輸業者自らがジャックしてプロパガンダを発するなど、CONCORDからすれば何も面白くなかったでしょうな…」
「まぁ、CONCORDも絶対正義かと言われれば怪しいのが最近なのですけどね、ミスター。 実際、デスレスが言う通り、SAROなどの一部の部隊には常々不穏な噂もありますわ。 もちろん、どれも噂にしか過ぎない上に、信用性にも劣るものなのですが。」
「…まぁ、それもそうですな。」

所詮は海賊や密輸業者といった外れ者達の戯言ではあるとは思っている。
…事実は一体どれなんだか。

「そういえばシオンハート女史。 サラキ議長と言えば気になっていたのですが… 演説の冒頭、議長が語っていた、暗黒の時代、それと…あのカイリオラという艦、それからそこに乗っていたあの男は一体誰なのでしょう?」
「おや… それに興味がおありですの?」
「えぇまぁ。 お恥ずかしながら、カルダリの歴史にはそこまで詳しくなく。」
「ふむ、そうですわね… では、少々話は脱線しますが、それについても話すとしましょうか、ミスター。」
「お願いできますかな。」
「喜んで… では… 話はカルダリがガレンテから独立する前まで遡りますわ。」

 

 

※当記事は橘 雪(たちばな ゆき)/El Shionheart氏による寄稿記事になります。

 

ありがとうございました!!

小説調で綴(つづ)られる、EVEのニュース記事ですね。

これから長くなります。

EVEの世界や歴史に興味がある方は、楽しんで読んでくださったら幸いです。

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