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【New Eden Headline】4・『激化する情勢、究極の惨事の発端』

「YC124年、6月が終わりに近づいていた頃の話ですわ。 ガレンテ連邦が連邦各地に国家権力施設を分散する政策を推し進めていた中、星間社会は2つの話題で持ち切りでした。 1つはアマー帝国がアマー領アーシャトシステムにあるダージ・ポレヴィティウムトランスミューターを強奪、占領した事件。 もう1つが、カルダリ、ガレンテ紛争宙域のアソウノンシステムで突如発見された謎のEDENCOMストラクチャですわ。」
「ダージ…なんと?」

まぁそれが普通の反応だよな。
トリグラヴィアンの言語はニューエデンのものとは全く違うしな。

「ダージ・ポレヴィティウムトランスミューター。 かのトリグラヴィアン侵略戦争の最中、トリグラヴィアンが侵略システムに建造したステラートランスミューターですわ。 アーシャトシステムはその中でもEDENCOMや有志カプセラによる反撃に成功したシステムで、その折にこのトランスミューターも制圧、奪取したのです。 それからこの事件まではEDENCOMや各国の研究チームが解析などを続けてきましたが、この時、アマーが突如として周囲に軍事拠点を建設。 その武力を背景にこれを独占したのです。 更にはどういうわけか、EDENCOMもこれを黙認。 ガレンテやミンマターの外交シーンからは猛烈な批判、反発がありましたが、結局この独占は成立してしまったのです。」
「欲しいものがあればなんでも武力で奪い取る… さすが野蛮なアマーに相応しい暴挙ですな…」

言わないべきなのだが、中々どうして、この男は良くも悪くもミンマター人だな…

「…ええと、まぁ。 それともう1つが、アソウノンシステムのEDENCOMストラクチャですわ。 アソウノンシステムはカルダリとガレンテが長年国家間戦争を続けているローセク宙域の1つ。 元々このアソウノンシステムはこの2ヵ月ほど前からトリグラヴィアンに関するいくつかのニュースで話題となっていて、その頃はガレンテの制圧下にありましたが、5月上旬頃、カルダリ義勇軍…連合プロテクトレイトの猛攻もあり、カルダリの制圧下へと移っていました。 そんな争点の1つであったアソウノンシステムに駐留する連合プロテクトレイトのカプセラから不意に寄せられた報告で、アソウノンVの上空軌道上にクロークとクローク解除を繰り返す不審なストラクチャが発見された、ということが分かったのです。」
「それが、EDENCOMのものであった、と。」
「そうですわ。 現地からの報告にあった記録映像にもその様子は映っており、確かによく見るとEDENCOMの徽章も記されていたのです。 また、他にもカルダリ海軍のフリゲートと巡洋艦からなる隊がこのストラクチャへと接近する様子も。」
「ふむ… カルダリ海軍も動いてた、ということですな。」
「そういうわけですわね。 さて、そのような情勢下、ニューエデンを駆け抜けたのは1つの衝撃的な報告でした。」
「というと?」
「連合プロテクトレイトに属するカプセラからこのような報告が寄せられたのです。 カルダリ海軍の准将、ヘイカ・トリゴ氏が海軍及び連合プロテクトレイトにアソウノンシステムのあるサースルドコンステレーション全域を何としても確保するように、また、アソウノンV上空軌道上に許可なく侵入したあらゆる艦船を即座に撃沈せよ、という軍事命令を発出。 そして、代表取締役委員会もサースルドコンステレーションにおいてCONCORD、EDENCOMとの協力関係を一時停止する、と。 もちろんこれにガレンテ連邦も即座に反応し、セレス・アガード大統領が連邦安全保障会議の緊急会合に出席、ガレンテ連邦軍最高司令官として、ガレンテ義勇軍…連邦防衛同盟のカプセラ義勇兵にアソウノンシステムの奪還、反撃作戦を命じることを承認しました。 これを受け、連邦海軍のフォリアナ・リヴェッリ副提督が連邦防衛同盟にアソウノンシステム、及びサースルドコンステレーションの全力を持った奪還を命令したのです。」
「両国が同時に焦点をアソウノンに向けた、と。」
「そういうことですわ。 これにより、その日を境にこのアソウノンシステムで両国海軍や、義勇軍の衝突は激化することになりました。 そして、この頃から、各国家間における外交危機がCONCORDの機能すらをも脅かすようになりました。 特に4大国家の代表団やCONCORDメンバーで構成されるCONCORDの最高意思決定、執行機関であるCONCORDインナーサークルの、その肝心の代表団がそれぞれ本国に帰国してしまい、機能不全状態だという報道すらありました。 これはこの頃の様々な国際情勢… 例えば、未だ影を落とすトリグラヴィアン侵略戦争の影響、国境領域での紛争、外交危機… そういったものの結果、4大国家における緊張はYC110年の危機以来の水準まで高まった、とも。 インナーサークルCONCORD代表団を以てすら、各国政府との議論を行うための枠組みすら作れない、と。」
「緊張に伴う外交の機能不全… 戦争の始まる前にはままあることではありますな…」

目の前の男が複雑そうな表情を見せる。
まぁ、このニューエデンの経済は国境を越えて広がっている。
戦争は金をもたらす、なんて話もあるが、実際のところ、物流が止まればそれどころではない、ということか。

「歴史が証明していることでもありますわね、ミスター。 さてそれから一か月ほどの間に情勢は更に劇的に進行しました。 まずその1つを言えば、親カルダリ派カプセラなどが回収したアソウノンシステムに関するいくつかの情報。 1つは、親カルダリ派系GalNet番組であるAchur-State-Mountain-Report…通称ASMRが報道したものであり、アソウノンシステムのEDENCOM通信中継リレーから回収した映像データですわ。 これにはアソウノンV地表にトリグラヴィアンが新たな施設を建造していることを示す映像が記録されていました。 もう1つ有名なものは、このASMRと、更に別の親カルダリ派カプセラの独立研究調査機関、Arataka Research Consortium、通称ARCがそれぞれ回収、公開したカルダリ海兵隊がEDENCOMストラクチャに突入、調査した様子の映像データもありますわね。」
「カプセラによる活動も随分と活発だったというわけですな、シオンハート女史。」
「それだけ、これらの事件は注目を集めていた、というわけでもあります。 また、それらと並行するように、アマーやミンマターでも動きがありました。 アマーではそれまでCONCORDインナーサークルのアマー代表だったサーダン・ゼル・クオシュ元帥がその任を解かれ、代わりに、聖座会十字勲章勲爵士へと叙され、また、反乱軍領…アマーが時々用いるミンマター共和国領の呼び名ですわね、その辺境伯へと取り立てられたのです。」
「今のアマー軍の戦域統括司令官…でしたな…」

苦し気な顔だ。
まぁ…それもそうか、ミンマター侵略の司令官、というわけだしな。

「ゼル・クオシュ元帥は指揮下の海軍や、アマー義勇軍…第24次帝国十字軍への命令として、反乱軍領の鎮撫をより強力に推し進めるように、との指示を同時に発出していました。 それと同時期に、ミンマターでも紛争宙域における指揮系統の再編があり、カンス・フィルミア将軍が広大な紛争宙域を抱えるメトロポリスリージョンの戦域指揮官となりました。 もっとも、もう1つの前線であるヘイマターリージョン戦域はメトロポリスに比べると規模は小さく、また、軍の最高司令官であるサンマター・マレアツ・シャコール氏もミンマター共和国の最高指導者であり、事実上、フィルミア将軍がアマー、ミンマター戦域における司令官という立場となったわけです。 こちらはミンマター義勇軍…部族解放軍に、アマーの支配下にあるエウギディ・コンステレーション解放に全力を尽くす命令を発出していました。 ただ、当時の部族解放軍はどちらかというと、第24次帝国十字軍の猛攻を受けるアマメイクシステムの防衛に重点を置いており、一部のカプセラからは、フィルミアがついに訳の分からないことを言い出したぞ、、フィルミアの野郎はまた酔っぱらってるのか、魚並みの知能しか持ってないなら水砂漠に帰りやがれ、などと、これでもまだ上品なほうですが、そんなコメントが聞かれる始末でしたわね。 第24次帝国十字軍のカプセラがゼル・クオシュ元帥の命令に熱狂的な支持を表明していたのと比べると、これはこれで何とも言いづらい話ではありますわ。」
「…フィルミア将軍と言えば、経験豊富と有名な司令官ではあったはずなのですがな…」
「まぁ、海軍と義勇軍はその時々で別、ということもありますわね。 にしてもその意図はよく分かりませんが… そうして、4大国家がそれぞれ軍への命令などを発出する中、9月末、事態は大きく動き始めました。 9月28日、奇しくもその日、4大国家は一斉に軍事警報を発令、翌日にはCONCORD紛争監視団がニューエデンの中央領域における戦争脅威レベルをYC123年中頃にテロ組織エクリブリウム・オブ・マンカインドが引き起こした4大国家へのテロ攻撃に伴う危機的緊張以来の最大レベルにまで引き上げました。 4大国家間の軍事的対立は深刻化の一途を辿り、CONCORDは事態の仲裁を試みるも、肝心のCONCORD、EDENCOMへの信頼感の喪失が影響し、これらが成果を上げることもなかったのです。」
「エクリブリウム・オブ・マンカインド… あぁ、各国の傭兵コーポレーションを悪用し、対立国家へとドレッドノートによる軌道攻撃を仕掛けたあの事件ですな。」
「ですわね。 あの時は最初はこの組織による関与が分かっていなかったこともあり、4大国家は全面戦争寸前まで緊張がエスカレートしていました。 CONCORDインナーサークル・ミンマター代表団が関与の証拠を発見、提出するのがあとほんの数日遅れていれば、どうなっていたことだったか。 …ですが、今回は、特にEDENCOMに厳しい視線が向けられていることもあり、そのインナーサークルは機能していないのです。 これはやはり、先ほどお話したアマーによるアーシャトシステムのトランスミューター強奪の黙認が大きく影響したようですわ。」
「絶対中立を謳えど、実態が伴っていない、と。」
「そうですわ。 CONCORDインナーサークル・ミンマター代表のケイタン・ユン大使もこの時、EDENCOMは嘘とまやかしの塊だ、と痛烈に批判していたほどです。」

何かとコメントが過激なんだよな、あの大使…

「それはそうと、4大国家が軍事警報を発出した背景ですが、これは、ミンマターのカンス・フィルミア将軍が発出した特別警報が発端でした。 この警報は、アマー帝国が紛争宙域のとある3つのシステムで、あの恐るべき計画を実行に移したことが引き金でした。」
「恐るべき計画。 …あれ、ですな。」
「えぇ。 これは言わずともよくご存じのようですわね。 そうです、アマーによる、プロトタイプステラートランスミューターの建造。 エグマ、ターナー、バードの3システム、ですわ。」

後に、ニューエデン史の中でも最悪クラスの大惨事を引き起こした、あれだ。

「これらの建造開始は当初、EDENCOMのとある一派が察知していましたが、その時点ではまだそれが何なのかはよく分かっていませんでした。 ですが、それがステラートランスミューターであるということが明らかになると、一気に星間社会の怒りを招くこととなりました。 紛争宙域でアマーに占領されているとはいえ、自国領にトリグラヴィアンが侵略に用いた装置をアマーが再現、建造したという事実のあるミンマター共和国やその同盟国であるガレンテ連邦からは当然のこと、カルダリですら強い懸念を表明しました。 そして、サーダン・ゼル・クオシュ元帥はこのミンマターの軍事警報に反応し、反乱軍領で活動するアマー軍と第24次帝国十字軍に帝国防衛警報を発出したのです。」
「ステラートランスミューター… ああ、トリグラヴィアン侵略戦争の終わり際に、ニューエデンを史上最悪の危機へと追い込みかけたあの… スターゲートネットワーク崩壊危機の。」
「ですわね。 あの装置の影響により、ニューエデン全域のスターゲートネットワークが崩壊寸前まで不安定化したのは今でも印象に残る事件ですわ。 あれのせいで、ポクヴェンは形成されることになったわけでもありますし。」
「…ナイアルジャ陥落は本当に最悪の事態でしたな。」
「ですわね。 あれ以来、カルダリとアマーを結ぶ安全性の高い航路はあまりにも遠回りが過ぎますわ。 代替ルートはベカミアにしろ、アーベイゾンにしろ、海賊が多すぎて使い物になりませんし。」

快速艦を使えば通れなくもないが…
物資の輸送などにはとてもじゃないが使えないのが現実だ。
あそこに定住する海賊連中は手練れなどという言葉ですら生易しいほどだしな…

「まぁ、この後にも順を追ってお話しますが、この時点でこのステラートランスミューターは、アマーがわざわざ本国から遠く離れた紛争宙域、しかもミンマター領に建造したことから、この技術が危険で、実験を行うことが破滅的な大惨事を招くリスクを帝国の技術者達が理解しているのでは、という懸念が既にあったのです。 私も、それは同じ思いでした。 続けて、カルダリとガレンテにも動きがありました。 ガレンテ連邦のフォリアナ・リヴェッリ副提督が、海軍全部隊へと警報を発出したのです。 これは、アソノウンシステム奪還に向けた大規模攻勢を意図したものでありました。 同時期、ガレンテはアミグノンシステムに新たなスターゲートの建設を開始。 これの目的地となるシステムは不明でしたが、ゲートの接続ベクトルからして、アソウノンシステムが目標であると噂されていました。 対するカルダリ、連合プロテクトレイトでも動きがあり、ヘイカ・トリゴ准将がサースルドコンステレーション防衛におけるこれら模範的な働きを賞賛した上で、引き続きサースルドコンステレーションを防衛するように特別命令を発出したのです。 そして、カルダリ側でもサマヌニシステムに、目的地は不明ながらも、アソウノンシステムへと向けられたと思わしき新スターゲートの建設が始まったのです。」
「これも大きな話題になっていましたな。 両国がアソウノンシステムを巡り激突を繰り返す、と。」
「それだけ、このシステムを両国は高く評価していたのでしょう。 さて、ここまでがYC124年、9月末頃までの出来事ですわ。 たった3ヵ月の間に4大国家間の緊張は激化、それぞれが衝突すら辞さないという覚悟を持ち、全力で自らの目的へと向かっていました。 …ここまで来ればわざわざ説明する話でもありませんが、次は10月始まってすぐのこと。」
「…あの大惨事の、全ての始まりですな。」
「そうですわ、ミスター。」

 

 

※当記事は橘 雪(たちばな ゆき)/El Shionheart氏による寄稿記事になります。

 

ありがとうございました!!

次回は……、お楽しみに^^!

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